コロナ禍を経て、日本を訪れる外国人観光客は大きく回復し、インバウンド市場は再び活気を取り戻しています。
近年では、欧米やオーストラリアからの訪日客も急増し、観光業界ではその対応が急務となっています。
こうしたなか、インバウンド需要の拡大を受けてさまざまな取り組みに挑戦しているのが眼鏡ブランド「Zoff」です。

特に、大阪のZoff心斎橋パルコ店には多くの訪日客が訪れ、現場ではさまざまな工夫や課題解決が進められています。
機能・デザイン性に優れためがね・サングラスを多数取り揃えるZoffに、インバウンド増加の背景や現場の課題、さらに店頭配送システム「ハコボウヤ」の導入による効果について詳しく伺いました。
訪日客に支持される眼鏡購入のスピードと接客力
――インバウンドのお客様が増え始めたのはいつ頃でしょうか?
コロナ後に一気に目立つようになりましたね。実は10年ほど前に中国人観光客による“爆買い”があって、その頃から予兆はありました。
コロナ禍で大きく減少したものの、規制緩和をきっかけに来訪者が戻ってきて、現在に至るまで勢いを増しています。
――どの国からのお客様が多いのでしょうか?
コロナ後、しばらくは中国のお客様が多かったのですが最近は減少傾向で、2026年は北米からのお客様が中国を上回っています。
そのほかにも、香港、台湾、カナダ、オーストラリア、フィリピン、インドネシアなど、さまざまな地域からご来店いただいています。
――北米を中心に幅広い国から来店されているのですね。増加の理由はどのようにお考えですか?
一番大きいのはSNSと口コミですね。中国向けのSNS(REDなど)で発信している情報が広がって、それを見た方が来店されるという流れがあります。
あとは口コミの影響。特にGoogleのレビューを見て来店される方が多く、評価が集客に直結していると感じています。
――たしかにZoffのGoogleマップを見ると外国人のレビューが多いので、口コミの力は絶大ですね。
海外のお客様はどのような理由でメガネを購入されるのでしょうか?
ひとつは価格ですね。円安の影響で海外よりも安く購入できる点は大きいです。
ただ、それ以上に評価されているのがスピードです。一般的なメガネ店だと受け取りまで1〜2週間かかるケースもありますが、Zoffでは在庫があればお会計から最短30分でお渡しできます。
――30分はかなり早いですね。海外ではあまりないサービスなのでしょうか?
そうですね。海外では眼鏡を買うときに、眼科(オプトメトリー)に行って処方箋をもらって、そのあと眼鏡屋でフレームを買って、レンズも別で買う必要があります。
Zoffではその場で測定ができて、お会計から最短30分後にはその場で眼鏡を貰えるので、自国とは違うスピード感のあるサービスに魅力を感じられていると思います。
また、海外ではフレームからレンズまですべて作ってみないと眼鏡代がいくらかかるかわかりません。そのため、価格が明瞭という点も日本で購入するメリットだと感じています。

▲海外の方にも人気の「Zoff SMART」シリーズも、在庫があれば即日受け取り可能。
――その他、Zoffならではの強みはどのような点にあるとお考えですか?
大きく分けて二つだと思っています。
ひとつは、アニメやキャラクターなどコラボ商品が多い点です。海外でもアニメ好きな方が非常に多いので、その部分が魅力になっていると思います。
もうひとつは、接客力です。よりよい商品を選んでいただくために、お客様に寄り添いながら、細かい点までしっかり説明することを大切にしています。
インバウンドのお客様からも「丁寧な接客だった」という声を多くいただいています。
――多言語接客で何かされていることはありますか。
店舗にポケトーク(AI音声翻訳機)を投入して多言語対応を行っているほか、英語と中国語による店内放送も行っています。
また、当店では自動の視力測定機を使っていて、多言語での案内も可能です。ちなみに、海外では視力測定が別料金だったり、店舗では受けられなかったりするので、無料で視力測定ができる体験が評価されているように感じています。

▲商品購入に含まれる視力測定サービス

▲受付カウンターや呼び出しも多言語に対応
――なるほど。視力測定も体験価値になるというわけですね。一日に海外の方は何人くらい測定されるのですか。
だいたい6割近くは海外のお客様を測定しています。
ハコボウヤ導入で現場対応がシンプルに
業務効率化が接客の質を高める
――続いて、Zoffでは弊社が提供する店頭配送システム「ハコボウヤ※」を導入されていますが、そのきっかけを教えていただけますでしょうか。
※ハコボウヤ…スマホで海外配送伝票が発行できるサービス
海外配送の対応をする際に、送り状記入に時間がかかる、カウンターを占拠してしまうことがありました。また、送り状の記入ミスによる未着や、お客様から「いつ届くのか」といった問い合わせ対応も店舗の負担になっていました。
そうした現場の声があった中で、DHLとハコボウヤのサービスを知って問い合わせたのがきっかけです。当社は、スタッフが働きやすい環境をつくることを重視しているので、業務効率化の観点もふまえてハコボウヤの導入を決めました。

――導入後の変化はいかがでしたか?
送り状の対応がなくなったことが一番大きな変化で、非常に好評です。
マニュアルを見ると最初は難しそうと躊躇する声もありましたが、実際に使ってみると「とても簡単」という評価に変わりました。海外配送に対する作業がシンプルになって工数が減ったので、業務改善につながっています。
また、ハコボウヤの管理画面から送り状や集荷の管理ができて、DHLのサイトへワンクリックでアクセスでき、発送状況をすぐに確認できるのも便利です。

▲ハコボウヤの管理メニュー
――「実際に使ってみたら簡単」という感想をいただけてうれしく思います。
非常にシンプルで使いやすいので、パートやアルバイトなど新人教育もしやすいという部分も含めて、いいサービスだと感じています。
――ハコボウヤ導入による業務改善は、接客にも影響していますか?
そうですね。業務が効率化されたことで、弊社が大切にしている接客に時間をかけることができています。結果として、お客様満足度の向上にもつながっていると思います。
――お客様から海外配送のご要望はありますか?
もちろんあります。フレーム自体の在庫は十分に揃えていますが、すべてのレンズを常備しているわけではありません。そのため、ご来店後にご要望を伺い、特注レンズを発注する流れになります。

▲人気の調光レンズ。度数によってはお渡しまでに日数がかかる。
ただ、インバウンドのお客様の場合、滞在期間が限られているため、完成を待たずに帰国されるケースも少なくありません。
特注レンズだと1週間ほどかかるのですが、「ハコボウヤ」を使えば後日配送することができます。海外配送のサービスがあることでお客様は安心して眼鏡を選ぶことができ、我々は購入機会の損失がなくなるので、積極的に案内をしています。
――お客様のニーズにも応えられているのですね。ちなみに、ご案内はどのようにされているのですか。
お客様から希望の眼鏡の種類を聞き取りした後、自動翻訳機などで「度数付きの眼鏡は日にちがかかります。どこから来られていますか」と国をお伺いしています。配送可能な国であれば「大体いくらくらいで配送可能ですが、ご希望されますか」といったように案内をしています。
――まずどこの国から来ているのかを聞き取って、配送可能か確認してから案内されているのは、一番ミスがなくていいですね。
そうですね。海外配送できると聞いていたのにできなかった場合、お客様にショックを与えてしまうので、配送可能か確認した上での提案がベストだと思っています。
Googleマップの口コミでも配送に関する高評価をいただいているので、海外配送という手段があると購入を決められるお客様は多くいらっしゃると思います。
――最後に、今後のインバウンド対応の展望をお聞かせいただけますか。
Zoffの強みである接客を、より多くのインバウンドのお客様に体験していただきたいですね。「また日本に来たい」と思っていただけるような体験を提供したいと考えています。
また、海外配送についても、各国のルールを確認しながら対応できる地域を広げていきたいと思っています。
――ありがとうございます。
取材を終えて
インバウンド需要の急増に対し、着実に対応を進めているZoff。
スタッフが気持ちよく働ける環境づくりこそが、質の高い接客につながる――そうした考えのもと、新たな取り組みとして店舗DXを推進されている点が印象的でした。
「ハコボウヤ」の導入によって、業務効率化だけでなく、接客品質の向上、さらには海外配送ニーズへの対応までを実現しました。
今後もインバウンド需要の拡大が続く中、Zoffが提供する“購入体験”は、日本での滞在価値を高め、訪日客の“最高の思い出”づくりにつながっていくことが期待されます。